身構えることなく、なんとなく手にした本が、読み終えたときに必要だったと気づく。そんな経験は、ないでしょうか?
クラシックな装丁に惹かれて手にしたのは、『THE LITTLE DICTIONARY OF FASHION』。辞書というには薄く小ぶりな一冊の中は、著者Christian Dior(クリスチャン・ディオール)が読み解くファッションのAtoZが並びます。
昨今のラグジュアリーブランドと言えば、クリエイティブディレクターの交代や人気俳優のアンバサダー就任などに目を奪われがちですが、出発点に立ち戻ると少し違った面も見えてきます。
以下は、Eの中にある、Elegance の項。
“I will only say now that elegance must be the right combination of distinction, naturalness, care, and simplicity. (中略) Of the four things I have mentioned above, the most important of all is care.”
“私に言えるのは、エレガンスは、見分けられること、わざとらしくないこと、気を配ること、そしてシンプルであることの、正しい組み合わせであるべきということです。 (中略) この4つの中で、最も重要なのは気配りです。”
こちらも、なんとなく買うまでの気分の盛り上がりやいつもの自分にどう取り入れていくかなどに集中しがちですが、大切なのは、状態を保つことも含めた、「気配り」であると。
そして、Introductionにはこんな表現も。
“First, you must study yourself.”
“まず、自分をよく知らなければなりません。”
今デザイン思考が埋めようとしているのも、従来のマーケティングデータの外側にある、手にする前に知る自分や手にした後まで続く気配りの領域なのかもしれません。
最先端を過去にアドオンしていくだけではないスタイルのつくり方も、情報もモノも溢れる今だからこそ、試してみる価値がありそうです。